羊の帝王切開

初産の羊 かなりの過肥(太りすぎ)の上、雄が能力が優秀でこの羊の前に分娩したお母さんは

三つ子で2頭は死産でした。

起立は出来たのですが、お腹が重いのか座っている時間が多く、おっぱいもかなり張っていて

牧場主は直ぐにでも帝王切開をして欲しい感じでした。

帝王切開にはトラウマが….

以前牛の帝王切開で大きな失敗をしたことがありました。

子宮を切開して子牛の足を引っ張って出そうとしたのですが、双子な事に気が付かずに、別々の牛の

足を引っ張っていました。一人で手術していたので何で?出てこない!パニックになって双子の可能性

に思いが至らず、かなり時間を要してしまい子も母牛も助からない事があったのです。

前の羊が三つ子だったし、このお腹の大きさからして少なくても双子。三つ子の可能性も充分あるな~

かつてのトラウマと、初産だからまず自分では埋めないから切らなくては!との思い出なかなか決断

出来ずにいましたが、牧場主の顔を見てやるしかない!と準備をしました。

術式は

ブランクがあるのと、一人でやるしかなかったので、左側横臥位でキシラジン塩酸塩(セラクタール)

で全身麻酔しました。実はNOSAI時代にも帝王切開はやった事がありません。所属していた診療所で

一度も帝王切開の手術が無かったのです。信じられないですよね。

一応いつか帝王切開する事になるかも?と頭でのシミュレーションはしていました。

その中で牛では立位(立たせて)、局部麻酔か尾椎硬膜外麻酔でするのが本来であり、全身麻酔では

お腹の中の子牛まで麻酔が効いてしまい、いわゆる「スリーピングベイビー」となり、悪影響がある

と読んだ事がありました。がスリーピングベイビーの実際の悪影響については調べても判らず、また

局所麻酔では母牛が暴れすぎて危ない状況で全身麻酔したという記事も2,3見ていました。

母羊はほぼ立てない状況なので立位はそもそも無理でした。

やはり….三つ子!!

牛と比較して筋肉の厚みが極端に薄く、子宮に到達するのは容易でした。逆に薄すぎて間違ったら

すぐに腹膜を切ってしまう程です。以前別の牧場でメス羊の卵巣だけ取り出すという手術をした事が

あったので、筋層の薄さには最初から気を付けていました。

子羊の足と頭を確保して羊膜を破り1頭目を取りだし(上顎が無い奇形でした)、もう1頭は居るはず

と手を入れるとやはり。2頭目を取りだし畜主に渡して、念のため子宮内を確認…….居ました。

3頭目も取り出し、子宮を縫合。連続縫合で一度切開部を閉じ、その縫合線が内側に入るように

2層目も連続縫合で縫いました(なんとかという縫合法ですが名前を忘れました)。

その後

子羊2頭は出生後も眠っていましたが、アチパメゾール塩酸塩(商品名アンチセダン)を0.3ml

静脈注射したら、1秒程度で目が覚めました。

写真は術後6日目の母羊と子羊(真ん中の白いのはその前に自然分娩で生まれた羊)です。

共に元気そうでとても安心しました。

臍ヘルニアのレア?ケース

牛の臍が腫れている

牛の臍が腫れるのには幾つかのケースがあります。

  1.  臍ヘルニアになっている
  2.  臍が化膿して膿が貯まっている(臍帯炎:さいたいえん)
  3.  臍ヘルニアと臍帯炎を併発している

臍ヘルニアと臍帯炎を現場で判断するにはどうすれば良いでしょうか

  •  ベロンと下がっている出べその先端辺りを上に(背中側に、お腹の中に向かって)押し込んでみる
  •  牛に声を掛けながら、びっくりさせない様に
  •  自身は牛の後ろ足の横にかがまない(蹴られます)で、前足の横に牛の尻尾方向に顔を向ける形で触る
  •  慣れない場合多少ビビりますが、押し込んでも破れたり内臓が出たりはしません。大丈夫です。

臍ヘルニアと臍帯炎の触感の違い

  • 出べそを上に押し込んだ時、ぐにゅとお腹の中に指が入る感じは臍ヘルニアです。指がお腹の中に入った段階でトンボを捕まえ  る時の様に指をゆっくり廻してみると丸く穴が空いているのが分かります。その丸い縁をヘルニア輪といいます。指1本くらいの穴ならヘルニアは1指(いっし)と言い、3本の指が入るならヘルニア輪は3指です。
  • 出べそを上に押し込んでも堅くて全く持ち上がらない、お腹の中に指が入る気配もないという場合は臍帯炎だと考えて良いと思います。単純なヘルニアの場合は出べそ部分がプニプニしていますが、臍帯炎では堅いのです。堅さはテニスボールやソフトボールくらいで、出べその先端部分だけ少し柔らかい場合もあります。
  • 中には堅い出べそをグッと少し強引に押し込むとヘルニア輪を触れる場合もあります。臍帯炎と臍ヘルニアが併発しているケースです。膿も貯まっているけど、臍に穴が空いていてヘルニアにもなっている場合です。
  • 堅すぎて触れない事もありますが、臍帯炎だと思われる堅い出べその先端部分を人差し指と親指でグリグリすると中に何かが引っ付いているのを感じる場合があります。臍の切れた端が癒着しているケースは鉛筆の様な芯のある棒状のものに感じますが、芯はなくやや柔らかい場合があります。柔らかい場合はヘルニア輪から脱出して下に下がっている内臓や内臓を包む膜が癒着している事が多いです。このケースも臍帯炎と臍ヘルニアの併発しているケースです。

生産者の出来る処置

  • 出べそが硬くて上に押し込んでも持ち上がらない場合は臍帯炎の可能性が高いのでペニシリンやマイシリンを数日注射して堅かった部分が柔らかくなるか確認します(もちろん獣医さんに依頼しても良いです、獣医さんと相談してから注射してください)。
  • 数日の注射で全く何も無かったかのようにペタッと引っ込む場合もあります。多くは先端部分がやや柔らかくなります。
  • 先端が柔らかくなればいずれ破れて膿が出ます。出べそが大きい場合は一度獣医さんに相談して破れるまで待って良いか確認した方が無難です。大量の膿が出ると出血性ショックではないですが、体液が急激に減少した事でショック死する場合があります。
  • 破れて膿が出たら、破れた場所から注射器に入れた生理食塩水などを注入し、グチュグチュと揉んで洗います。破れた場所は2~3日で塞がりますので、塞がるまでは破れた箇所から抗生物質を注入すると良いです。
  • 臍ヘルニアかもと思われる場合は獣医さんに相談して手術するか様子を見るか判断してもらいましょう。
  • その牛が子牛であって、ヘルニア輪が1、2指ならヘルニア用のベルトがありますので試しても良いと思います。

ヘルニアの手術をするか否かの判断

  • 濡れ子導入で育成時点でセリ市場で販売するという牛なら手術しようという判断が一般的だと思います。
  • 一貫肥育など素牛販売しない牧場の場合判断が分かれます。私が伺っている牧場でもヘルニアなんか手術しなくても大丈夫だという牧場もあります。さすがにヘルニア輪が4指以上な一応手術した方が良いと思いますよとは伝えます。
  • それでもいいよ、手術はしないとおっしゃる牧場もあり、私自身も肥育途中でヘルニアが破れて牛が死亡するというのを診た事がなかったので、そうですかと無理には勧めてきませんでした。

ヘルニアが破れてしまった!

写真の牛は生後9~10ヶ月の牛で、肥育に入ったばかりの牛でした。

その農場では今までヘルニアの手術はしてこなかったので経営者の方も出べそだと認識はしていましたが、急に左の写真のようになりびっくりで連絡が来ました。

脱出した組織は腸ではありませんでしたが、おがくず等でかなり汚染されていたためお腹に返納して縫合するという判断にはなりませんでした。結果この牛は翌朝には死亡してしまいました。

当然あり得る事のはずですが、初めての経験だったので私もとてもびっくりしました。

牧場経営者としては今回のようなレアケースを考慮して全てのヘルニアを手術しようという判断はコスト的には困難であると思います。

我々獣医師はこうなるケースがあると注意深く説明する責任があると強く痛感しました。

破傷風の開帳姿勢と筋肉振戦(動画)

破傷風という病気

またクロストリジウムの話になってしまいますが、ここ何年かクロストリジウムが原因の病気がとても増えている様な気がして・・・実際に現場で遭遇する事も増えました。

さて、破傷風はクロストリジウム・テタニーというクロストリジウム属の菌が原因です。テタニーとは痙攣という意味です。

牛の破傷風の症状と言えば口を食いしばる様な「牙関緊急(がかんきんきゅう)」と呼ばれる症状と、四肢を硬直伸長して首も後ろにグーと反ってしまう「後弓反張(ごきゅうはんちょう)」が特徴的です。

四肢は曲げようとしても曲がりませんし、首を戻しても直ぐ反ってしまいます。

ほとんどの場合発見した時にはこの状態になっていて、慌ててペニシリンやアンピシリンを頻回投与しても残念ながら助けられない事が多いです。

この状態でも1週間~10日生きている事もあり、牧場の人が見かねて安楽死してくれとなるのです。

 

破傷風の症状(教科書的には)

「牛の臨床」によると

潜伏期は1~3週間で、まれにさらに長期間を要する事もある。初期症状としては、騒音や光に対する反応の亢進がみられ、不安そうにしたり、興奮しやすくなったりする

と初期症状についてありますが、この時点で発見する事はほぼ無いでしょう。その後症状が進むと

四肢、頚部、尾部の筋肉が硬直し、その結果、歩く事を嫌がったり、尾の挙上がみられたりする。静止しているときに開帳姿勢(いわゆる「木挽台」あるいは「木馬」様姿勢を取ることもあり、さらに耳翼開帳、鼻翼開帳、瞬膜露出、牙閑緊急、流涎などがみられる。

とあります。

上の動画は典型的な開帳姿勢と筋肉振戦、流涎が見られた牛です。

とは言っても遭遇したのは初めてでした。何十頭も破傷風の牛は見ましたがいきなり「後弓反張」の牛ばかりでした。

この牛のその後

最近破傷風が多く、自宅に破傷風血清を4本(50mlを4本)持っていたのですが、何日か前に別の牧場で3本使ってしまい1本しかありませんでした。

破傷風血清は早期に100~200mlを注射するものなのですが、50mlしか無かったんです。

とりあえず50mlを静脈注射し、静脈注射できるペニシリン(結晶ペニシリン)を5日間朝、夕2回打ってもらいました。

なんと助かりました。目をひんむいてる様子は変わりませんが、開帳姿勢と筋肉振戦は無くなり食欲も正常です。

破傷風血清の課題

動画の牧場では血清を注射した前後にも破傷風が発生しました。血清を取り寄せるのに何日か要した為、前後の牛はペニシリンだけの対応で、結果助かりませんでした。

血清を投与するまでの時間との勝負だと思います。但し血清は1本約2万円しますので、発生するか判らないのに、牧場で常備してもらう事は出来ません。

そこで発生の比較的多い(年間何頭か出る)牧場にはそれぞれ2本冷蔵庫で保存してもらい、使用した後請求する事としました。使用せず使用期限が切れたら新しい血清と交換するという事で。使用期限が切れた血清は廃棄するので私の負担となるのですがそれは致し方ないと思いました。

獣医師としては発生するか判らないのに常備出来るか?そして発生後いかに早く投与出来るか?が課題になると思います。

凍傷(子牛)

 北海道では珍しくない凍傷

冬場の最低気温がマイナス20℃を超える事もあるこの地域では凍傷になる子牛を見る事も珍しくありません。

耳の先が落ちてしまったり、球節から下がボロっと落ちてしまいます。

球節が落ちる場合、その何日も前に球節付近にグルッと1周線が入っている様に見えます。

実際は線では無くて幅1~2mmくらい皮膚が裂けているのです。

この時点で球節から下の皮膚とその下層組織には血流は無いものと思います。だから皮膚組織が壊

死して裂けて線が入っている様に見えるのだと理解しています。

線が入ってから何日か後、1週間か2週間か、もう少し長かったかも知れませんが足が取れ始めます。出血は全くありません。

線が入っていた所より下は血液が流れていない訳ですから出血はしませんよね。当然です。2枚目の写真は右後肢球節から下がほとんど取れてしまっています。

完全に取れると3枚目の様な断面が見られます。骨も同じ断面で落ちてしまっています。

この時点では化膿もしていませんし、子牛は元気にミルクも飲みます。創面が床に着くのが痛そうでクッション材で被服して、包帯で巻いたりしましたが、最終的には化膿して駄目でした。

 

 原因は?

初めて北海道で凍傷の牛を見た時「分娩した時の環境、例えば生まれて冷たいコンクリートの上に長時間居たとかが原因」と人が教えてくれました。

1,3枚目の写真は黒毛和牛で母牛が1,000頭を越える大規模農場の子牛でした。どの子牛も同じ様な環境で生まれていて、この子牛が特別冷える環境ではありませんでした。

他の原因が無いか調べていると松本大策先生のコラムに面白い記述がありました。 

「寒冷凝集素症」という病気です。寒冷凝集素とは血液中に存在する「低温状態で赤血球を凝集させてしまう成分」で固まった赤血球が血栓となり、その先の組織が壊死するとの事。

寒冷凝集素は肺炎やマイコプラズマ感染症で増えるとの事。

 それでも疑問が残る…..

冬期に肺炎やマイコプラズマ感染症に罹る子牛はこの地域ではものすごい頭数です。そしてその課程で低体温になる子牛も多いです。

また、私が見た凍傷の子牛はいずれも肺炎等の治療中、もしくは治療後の子牛ではありませんでした。

低体温と肺炎あるいはマイコプラズマが原因ならば北海道の子牛でもっと多くの牛の四肢端や耳が壊死しているはずだと思うのです。

現実的には発生件数は非常に少ない、と言っても過言ではないくらいの発生率です。

やはり凍傷だと考えるのが理屈に合う様な気も…….正解は不明です。

 

 

 

 

 

肥育牛(育成牛)の突然死②

 牛でのクロストリジウム感染症の種類

クロストリジウム属菌による病気は

  • クロストリジウム・パーフリンゲンスによる出血性腸炎あるいはエンテロトキセミア
  • クロストリジウム・ショウベイによる気腫疽
  • クロストリジウム・セプティカム、クロストリジウム・パーフリンゲンス、クロストリジウム・ノビィによる悪性水腫
  • クロストリジウム・テタニーによる破傷風
  • クロストリジウム・ボツリナムによるボツリヌス症

これらの内気腫疽破傷風届出伝染病(発見、診断した獣医師は都道府県知事に届け出る義務がある)です。

牛の世界ではサルモネラ菌と並び非常に厄介な恐い菌です。

 突然死を引き起こすクロストリジウムは

上記の内、牛で突然死を引き起こすのはエンテロトキセミア、気腫疽、悪性水腫です。破傷風については以前

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で紹介しましたので、興味があればご覧下さい。ボツリヌス症については後で別に紹介します。

 それぞれの症状(教科書によると)

  • エンテロトキセミア  発熱、出血性下痢、食欲廃絶
  • 気腫疽        高熱、皮下気腫(皮下にガスが貯まり押すとプチプチ音がします)、運動器障害(起立が弱くなる、モタモタと歩く、痛みが有るように歩く、起立出来ない)
  • 悪性水腫       皮下水腫(水様性のものが皮下に貯まり腫れる)、皮下気腫(ガスが貯まる)

それぞれの症状が出れば分かりやすいのですが、実際はそうはなりません。エンテロトキセミアで出血性下痢が見られるか?というと見られない事の方が圧倒的に多いです。死亡して解剖すると体内であらゆる臓器、皮下に出血が見られるというパターンが多いと思います。

少し話は逸れますが子牛でもエンテロトキセミアがあります。出血性腸炎の方が馴染みがあるかも知れません。子牛の血便と言えば疑うのはサルモネラ、出血性腸炎、コロナウィルス、コクシジウムといったところです。

子牛のクロストリジウムによる出血性腸炎の厄介な所は明らかな血便を示さないケースが多いという事です。朝はミルクをのむけど夕方は飲まない、且つ日中はお腹に鼻先をくっつける様に(具合悪そうに)グッタリしている。翌朝はお腹が空くのでミルクをなんとか飲む。

その程度の症状しか出ない場合も多いのです。その後死亡した牛を解剖すると腸内に大量の出血を認めるというケースを何度も見ました。

また、下痢の原因を調べようと糞を検査に出してもクロストリジウムは検出されない事も多いのです。クロストリジウムは嫌気性菌といって酸素のある場所では生存できないため、普通に便を取っても検出する前に死滅しているという事です。

クロストリジウムにはアンピシリンが良く効きます。子牛が下痢で死ぬ、中には血便の牛も居た、バイトリルなどを使ってもイマイチ効いていない様な感じがする場合、アンピシリンを使うと良くなる事もあります。

話の逸れついでにアンピシリンは時間依存の抗生物質です。ペニシリンなどもそうです。時間依存の抗生物質は一度に大量に注射するよりも1日に2~3度注射する方が効果が高いのです。1日量を分けるのではなく、例えば体重40kgに2ml注射するとすると2mlを2回ないし3回注射するという事です。

確かエンテロトキセミアは鼻孔や口からの出血が見られるという症状もあったと思いますが、気腫疽で死亡した牛でも鼻孔や口からの出血が見られる事もあります。

 クロストリジウムの感染経路

クロストリジウムは創傷感染という珍しい感染経路で感染します。傷口から感染するという事です。牛から牛へ伝染する病気ではありません。たまにポツッと発生する突然死などは足の傷口、肢間腐乱の病巣などからの感染はあると思います。

クロストリジウムによる突然死は同時期に、立て続けに発生する事があります。まるで次々に伝染しているかの様に見えます。

経口感染するという文書をネット上で見ましたが、私はその場合も経口感染ではなく創傷感染であると思っています。

例えば牧草がクロストリジウムに汚染されている場合、同じ牧草を与えた牛群の中で、口から肛門までの間に傷があれば感染が成立し、同時期に立て続けに発症するのだと理解しています。

育成牛や肥育牛ではアシドーシスにより第1胃の粘膜が剥がれ落ちている事は普通にあるので、そのような牛は発症し、そうでない牛は同じ牧草を食べても発症しない事になるのだと思います。

クロストリジウムは土壌菌と呼ばれる、土の中に普通に居る菌です。汚染される可能性は十分あります。

 牛のボツリヌス症

この病気もクロストリジウムによる病気です。教科書的には食欲廃絶と衰弱、流涎、呼吸困難、嚥下困難なども症状としては記載されていますが特徴的なのは後肢の麻痺です。

経過が早く発症から3日程度で死亡するとされていますが、完治した経験があります。

破傷風が時々発生し、突然死もあった牧場である時1頭の牛が隔離されていました。4,5ヶ月齢くらいの牛。「どうしたの?」「昨日群の中でふらふらしていたから隔離してます」「立つの?」「後ろ足がきかないみたいです」との事でした。

ボツリヌス症の可能性があるからアンピシリンを1日3回注射しようか?となり、その後その牛は普通に立つ様になりました。

 クロストリジウム ワクチンの考え方

私が知る限り素牛導入時にキャトルウィンCL5を注射する牧場はありますが、その後6か月おきに打っている牧場は非常に少ないです。牛は大きいしとても手間ですよね。

クロストリジウムによる突然死は肥育後期に多いと言われます。低いビタミンAやアシドーシスが影響していると思います。発生農場では出荷月齢から逆算して6か月間隔でキャトルウィンCL5を注射する事も検討すべきだと思います。

 クロストリジウムの消毒

クロストリジウム属の菌は周囲の環境が自身にとって良くないと、芽胞という殻に閉じこもり数年以上生存します。芽胞の状態であると100℃4時間以上加熱しても死滅しません。

 

肥育牛・育成牛のその他の突然死についてはまた別の機会にします。

肥育牛(育成牛)の突然死①

 肥育牛の突然死の原因は肝膿瘍?

NOSAI時代は肥育牧場に診療に行っても「注射はこっちで打つから薬だけ置いていって」と言われ牛にも触らせて貰えませんでした。新人獣医だった事もあるでしょうが、先輩獣医師も肥育牧場で治療している様子は無かったのでそういう時代だったのかなと思います。30年も前ですから…..今は違うと思います、たぶん。

その後和牛繁殖の牧場で働き、配合飼料会社へ転職しました。配合飼料会社に入り牛の経験があるとの事で肉牛の研究技術員に配属され肥育牧場に伺う機会が増えました。

ほぼ肥育牛に接する機会も無いまま来ましたから、肥育牛の病気も、目の前の牛がどれくらいの体重なのかも、この月齢でこの大きさなのは正常なのか否かも全て判らない状態のスタートでした。

配合飼料会社なので病気の話になる事はほぼ無かったのですが、時折「肝膿瘍でポロッと死ぬんだよな」という話を聞きました。肥育牛の突然死です。「前日まで異常無くて眠るように死んでいる時は肝膿瘍なんだって」という話でした。

聞く側に知識が足らないので「そうなんですか…」くらいの反応で今考えると我ながら情けないと思います。突然死の死因を究明する立場でも、その必要も無かったからではあるのですが…

 肥育牛の死亡原因

「肥育牛の栄養と感染症」木村信熙(The Jornal of Farm Animal in Infections Disease VoL1 No.2 2012)の「死廃の原因となった肥育牛の主な疾病発生率の変化」という表から肝膿瘍の死廃を見てみます。突然死のみでは無くすべての死亡、廃用についてです。

死廃とは死亡と廃用という意味で、廃用とはNOSAIに加入している牧場で

  • 一両日中に死亡すると認定された場合
  • 起立不能、骨折、舌断裂など回復不能と認定された場合

など(他にもありますが)肉として屠畜し、一定程度の共済金(死亡保険金の様なもの)をもらえる制度で、NOSAIに加入していない人では馴染みが無いですが、緊急出荷と同じ様なものです。

資料によると2009年肥育肉牛死廃頭数は 41,370頭。その内消化器病が30.3%、呼吸器病が24.3%、循環器病が20.0%で全体の75%を占める。

これを疾病別にみると、肺炎が23.7%、心不全19.3%、鼓張症が10.5%となります。

肺炎、鼓張症が多いのは納得ですね。ただ心不全19.3%は疑問です。

「心不全 死因」で検索すると人医療での心不全は『さまざまな心臓病を患った人が、その後、心臓の機能が低下して、日常生活に支障をきたすような状態になる事を心不全と言う』となっています。

しかし最終的には心臓が停止して亡くなるので、死因が特定出来ない場合に「心不全」が使われてきた経緯があるようです。

寿命を全う出来る「人」では心機能が低下し心不全に陥る事は理解出来ます。牛は長く肥育される黒毛和牛でも30~40か月齢です。心不全が低下して死亡しているとは考えられません。

つまり、肥育牛の20%近くの死亡も多くは原因が特定できないから「心不全」とされている可能性があるという事です

 肝膿瘍の死廃率は?

上で死廃率のトップは消化器病の30.3%であると記しましたが、肝膿瘍は消化器病に入ります。肝膿瘍の他にはルーメンアシドーシス、鼓張症、食滞、第4胃変位などおなじみの病気が入ります。

肝膿瘍の死廃率はどうでしょうか?0.3%です。41,370頭の0.3%は124頭です。

多いと思うでしょうか?少ないと思うでしょうか?

その他の肝臓病、肝炎などを加えた死亡および廃用の頭数は186頭です。

そもそもエコーを使わないで「肝膿瘍」という診断を付ける事自体が難しいので124頭でも多い様に思います。最近では牛の世界でもエコーを使う事が増えた様ですが、使用用途は主に妊娠鑑定などの繁殖部門が多い様です。

 ここで疑問です

肥育牧場のみならず育成牧場でも離乳後の群で「前日まで異常が無かった牛が眠るように死んでいる」(突然死)という経験はあるとおもいます。

「眠るように死んでいる」(突然死の)牛の死因が肝膿瘍なら、死亡牛の0.3%が該当する事になります。1,000頭の死亡牛の内3頭が「眠るように死んだ」事になります。もっと多くないですか?

1,000頭も死んだら大変な事ですが。

つまり「前日まで異常が無かった牛が眠るように死んでいたら肝膿瘍だ」というのが間違いなのです。

 もう一度心不全を考える

突然死した牛の死因を考える時、何の死亡原因も見られないという事はよくある事です。「なんで死んだの?」と牧場の人に聞かれて、前日まで何の症状も無かったのに「肺炎ですね」とは言えない。

そこで「心不全ですね」という事になるのです。

確かに子牛の聴診をすると心雑音があったり、ドックンドックンのリズムが不整だったり、一部の心音が聞き取れないという牛は居ます。それも珍しいわけでもなく、よく出会います。

それらの牛が成長し、体重が増えた事が原因で心不全を起こし突然死する事はあると思われます。全てを否定する気は毛頭ありませんが、20%近くの牛が心不全で亡くなるというのはやはりあり得ません。

 肥育牛の突然死の原因

肥育牛と離乳後の育成牛で突然死が起こる。敷き料の僅かなくぼみにはまって起き上がれず窒息死する事も珍しくはありませんから「窒息死かな?」と考えるけど、牛がもがいた形跡が無い。

20%近くの心不全の中にはクロストリジウム感染症がかなり多く含まれると考えています。

 肥育牛(育成牛)におけるクロストリジウム感染症

子牛の下痢でもクロストリジウム感染症は問題になりますが、今回は肥育牛(育成牛)の突然死に関連してのクロストリジウム感染症を考えます。

教科書的には

  • クロストリジウム・パーフリンゲンスは主に肥育末期に鼻、口などからの出血や下痢を起こす。
  • クロストリジウム・セプティカム、クロストリジウム・パーフリンゲンス、クロストリジウム・ノビィが期間を問わず下痢、発熱、呼吸困難、皮下気腫(皮膚を押すとプチプチした音がする:注 肺炎でも皮下気腫ができる事があります)を起こす
  • クロストリジウム・ショウベイが発熱、浮腫(むくみ)、皮下気腫を起こす

となっています。典型的な症状を出したらそうなるという理解の方が良いかもしれません。

上記クロストリジウム感染症の全てに共通する症状は「突然死」です。

そして実際の現場ではほとんど症状を示さず突然死の原因となっています。

 クロストリジウムによる突然死の例①

ある牧場での例。離乳後~9か月齢までの牛が入っている牛舎で突然死が多いとの相談を受けました。前日までは何の異常もないのに、朝牛舎へ行くと死んでいる。年間何頭も出るとの事。

「クロストリジウム・パーフリンゲンスという出血性腸炎を起こす菌が原因だと思います。キャトルウィンCL5というクロストリジウム属のワクチンがあるのでワクチンを使っては?」と、しかし

「突然死する牛は下痢もしていないし、まして血便もしてなくて死んでいる」という返事。説明が下手で申し訳ない・・・

「一般的には子牛で出血性腸炎を起こす菌として知られていますが、育成牛や肥育牛では突然死を起こすんです」

その後しばらくはキャトルウィンCL5を使おうという判断は頂けませんでしたが、ある日また突然死が・・・そこで化成処理場で皮下や腸内に出血が無いか?調べて貰ったところ、確かに皮下と腸内で多くの出血が認められたという事がありました。それがクロストリジウムだと培養したわけではありませんが。

その後キャトルウィンCL5を使い半年以上が経過しましたが、その牧場で突然死は出ていません。

 クロストリジウムによる突然死の例②

交雑種肥育牧場で出荷近い牛が立て続けに4頭死亡。突然死でした。週末を挟んで翌週も1日1頭、2頭と突然死。5頭目を家畜保健衛生所に剖検依頼。クロストリジウム・ショーベイが検出されました。

キャトルウィンCL5は打っていましたが生後7か月前後で1回のみ。本来キャトルウィンCL5は3週間~1か月の間隔で2回接種する必要があります。

そして厄介な事に2回接種してもその効果が6か月しか持続しません。一番肉が乗る肥育後期には効果が切れてしまうのです。

長くなりましたので続きは次回にしたいと思います。

エンドトキシンの影響

 前回まででエンドトキシンについて

  1. 粗飼料多給牛の第1胃の中、第1胃静脈血液中にもエンドトキシンは存在する。しかし末梢血液中には存在しない。
  2. 濃厚飼料を多給すると第1胃の中、第1胃静脈血液中のエンドトキシンは著増し、末梢血液中でエンドトキシンが検出される。
  3. 肝臓に流入するエンドトキシン濃度が40 pg/mlを超えると、肝臓の解毒の処理限界を超えて溢れたエンドトキシンが末梢血液中にオーバーフローし、エンドトキシン血症状態になる。
  4. 腸管からのエンドトキシン吸収もある
  5. 濃厚飼料多給試験でルーメンパラケラトーシスがあった牛では末梢血液中にエンドトキシンを検出したが、ルーメンパラケラトーシスが無かった牛では末梢血液中にエンドトキシンを検出しなかった。

という試験を紹介し考えてきました。

 エンドトキシンが第1胃、第4胃へ与える影響

更にエンドトキシンが血中に流出した場合、第1胃と第4胃にどのような影響を与えるかについて「牛のエンドトキシン血症における第一胃運動、第四胃運動および肝臓への影響」(産業動物臨床医誌10(1):1-16,2019)で試験されています。

なお、引用文中のLipopolysacchride(LPS)はエンドトキシンと同じ意味です。

LPSを牛の静脈内に投与してLPS血症を実験的に再現し、第一胃運動、第四胃運動、肝臓並びに代謝に与える影響について検討した

その手順は

供試牛3頭の頸静脈内にLPS(E.coli O55:B5,SIGMA東京)5㎍/kgを1回投与した。LPSの静脈内投与後に経時的な採血および生理機能検査を行い、1週間後に病理解剖検査を実施した。採血はLPS投与前(Pre)、投与1,3,6,9時間後および1,2,3,4,5,6,7日後に実施した。

その結果第一胃運動は

第一胃運動は、LPS静脈内投与1時間後にほぼ停止し軽度の誇張症を発症した。投与9時間後から第一胃運動は回復し始め、翌日には収縮運動はほぼ回復した。

第四胃運動は

LPS静脈投与1時間後にはほぼ停止した。投与9時間後には、第四胃の収縮運動はほぼ回復した

とある。驚くべき結果でした。エンドトキシン投与1時間で第1胃と第4胃の運動がほぼ止まる。

育成牛以上では食欲がない、餌を食べないという稟告はよくある事で、当然聴診で第1胃運動が低下あるいはほぼ停止していると判断する状況はよくある事です。ミルクを飲まない牛の第4胃を聴診しても運動が低下しているかは判りませんが…….

第1胃がほぼ停止している場合一番に頭に浮かぶのは第1胃食滞です。その他には伝染性リンパ腫です。昔は牛白血病と言いましたが今は伝染性リンパ腫と言います。伝染性リンパ腫の牛を何頭か診た事がありますが、ルーメンの聴診音はびっくりする程静寂です。何の音もしません。

面白いケースがあります。最初は学生時代でした。我が研究室では牛、羊を飼養していましたが羊のルーメンにフィステルという器具を装着し蓋を開けると直ぐルーメンにアクセス出来る手術をしていました。消化試験などのために。

術後少し化膿するんです。そこにハエが集るんですね。そこに当時助手だった先生(獣医ではない)が殺虫剤をスプレーしていました。その後その羊は全く餌を食べなくなり何が原因だ?と小パニックに…..

「あれ?先生殺虫剤かけてませんでした?」となり、その後羊の食欲は正常になりました。殺虫剤が粘膜から吸収されるとルーメンの運動が停止するとその時知りました。

2度目は何年か前「牛が全く餌を食べない」という事で聴診。全くの無音。「白血病の時みたいだね~」なんて言って、リンパ節を調べても異常が無い。何か変と思いながらグルッと牛を聴診。その時足に傷があるのが見え「怪我したの?」「そうなんです」

その時まですっかり忘れていた学生時代の記憶がフラッシュバックして「もしかして傷口に殺虫剤かけてない?」「はい、ハエが多くて…..」「それが原因だね、殺虫剤止めれば食べるようになるよ」と言うとポカンとしてましたが、その後牛は食べるようになりました。

伝染性リンパ腫は体表リンパ節の腫脹などその他症状を見れば類症鑑別できます。第1胃食滞はどうでしょう?第1胃食滞では体温、呼吸数や心拍数に異常は診られません。エンドトキシンの影響で第1胃運動が停止した場合は、上記試験で

牛へのLPS投与後、全頭で30分以内に呼吸が促迫となり1時間以内には水様性の下痢を生じた。3~7時間後にかけて、牛は座り込み食欲もなかった。9時間後には立ち上がり少し落ち着いた様子を見せた。

とある。エンドトキシンの影響で第1胃運動が停止する場合呼吸数に異常が診られるという事です。

では体温はどうでしょう?「エンドトキシン」を検索すると主に人医療でのエンドトキシンについて、「エンドトキシンは代表的な発熱物質であり、全身性の炎症反応を起こす」とあります。

牛も同じでしょうか?「エンドトキシンと牛の病態 新井鐘蔵 動物衛生検査所 病態研究領域」では

牛では必ずしも直腸温の上昇が認められるわけではない。これに関しては様々な報告がある。たとえば、仔牛に高濃度あるいは低濃度のLPSを投与すると発熱反応は起きず、2㎍/kg投与すると低体温とショックを起こし、0.25㎍/kg投与すると明瞭な発熱反応が観察されないいう報告がある。

また

経時的には、成牛の方が比較的ちゃんと発熱を起こすが、仔牛や育成ではショックをおこすこともよくみられ、発熱を起こさず低体温になるということが実験的にわかった。

とある。牛の場合発熱は判断基準とはならないという事になります

つまり第1胃の運動が停止しているケースでは、それがエンドトキシン血症の1症状かもしれないという事を知っている事が重要で、その際は呼吸数の増加、歩様蹌踉(歩く様がふらふらしている)、起立しない等他の症状があるという事です。

 子牛へのエンドトキシンの影響

では子牛への影響を考えてみます。上記の引用文から子牛への影響は

  • エンドトキシン血症では第4胃の運動がほぼ停止する。
  • 呼吸促迫(呼吸数の増加)が診られる。
  • 必ずしも発熱があるわけではない。
  • ショックや低体温になる事がある。

そうなる原因は育成牛以上では亜急性アシドーシスである事もありますが、哺育牛ではルーメンはほとんど発達していないためアシドーシスは関係ありません。つまり病原性のグラム陰性菌の死滅が原因になります。

上記4つの箇条書きを読んで、ん?となりませんか?

肺炎であれ、下痢であれ治療中の子牛で朝ミルクは飲んだ。治療の為抗生物質を注射した。午後牛舎に行ったら呼吸が速く、起立出来ず、低体温になっている。子牛を飼養している人なら経験があると思います。

そんな場合どの様な処置をするでしょうか?頭に浮かぶのは「薬のアナフィラキシーショック」でしょう。となれば注射するのは副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)かアドレナリン(人薬なので獣医以外は持っていないと思います)です。場合によっては血流を確保するために点滴もするでしょう。

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上のブログでも紹介しましたが、血中のエンドトキシンを減らすにはウルソデオキシコール酸を注射します。通常のアナフィラキシーショックの処置だけでは血中エンドトキシン濃度は下がりませんので、放置すれば最悪多臓器不全を起こす事もあります。

また先のリンク「エンドトキシンと牛の病態」ではウルソデオキシコール酸を静脈注射した場合と経口投与した場合の違いについて

UDCA頸静脈投与群では3時間目以降末梢血液中にLPSが検出されなくなった。一方、ウルソは経口投与しても速やかに腸管に吸収されるが、経口投与した牛ではLPSは末梢血液中に残っており、特に改善は見られなかった。

とある。つまりウルソデオキシコール酸は静脈注射する必要があるという事になります。

おかしいな~朝注射した時は元気だったのに…..急に低体温になって起立も出来ない。比較的多いケースです。ウルソの注射は常備しておいた方が良いかも知れません。ミルク飲まない場合にも使いますし……..

 

 

 

 

 

エンドトキシン再考②

引き続きエンドトキシンについえ考える

 前回は

前回エンドトキシンについて

  • 粗飼料多給牛群の第1胃でもエンドトキシンは存在し、第1胃静脈血液中にも存在するが末梢血液では検出されない。
  • 配合飼料を多給すると第1胃、第1胃静脈血液中のエンドトキシン濃度は著増し、末梢血液中にエンドトキシンが検出される。
  • 肝臓に流入するエンドトキシン濃度が40 pg/mlを超えると肝臓でのエンドトキシンの解毒限界を超え、溢れたエンドトキシンが末梢血液中に流入、エンドトキシン血症を発症する
  • 腸管からのエンドトキシン吸収もある

という論文について紹介しました。

 まずアシドーシスについて

育成牛後期や肥育牛では給与する配合飼料が増え第1胃が酸性に傾くのは致し方無いのです。粗飼料多給牛の第1胃phはどれくらいかというと6.8~7.0くらいです。

ではルーメンアシドーシスでのphはどうでしょう?急性アシドーシスではph5.5以下になります。今ではあまり無い様に思います。あるいは地域や飼養形態によってあるのかもしれませんが。

急性アシドーシスは処置を迅速に行わないと牛が死亡します。第1胃が急激に酸性に傾くと牛の体は第1胃の酸性を薄めようと体の水分を第1胃に移動させます。そのため急激な脱水症状が見られ、併せて水様性の下痢もしますから急激に体水分が喪失します。大量の点滴で体水分量の確保とphの補正(重曹の点滴)を行い、強肝剤の投与、必要に応じて胃洗浄などを行います。

昔遭遇した急性アシドーシスで多かったのは牛が牛房から脱走して置いてある配合飼料やトウモロコシ圧ペンを盗食したというケースです。

希なケースで給餌車で育成牛に与えるべき配合飼料を間違って肥育牛舎へ給餌してしまい、喜んだ肥育牛がおいしい育成飼料を食べ過ぎて急性アシドーシスでバタバタ倒れて、何頭も同時に点滴したなんて事もありました。

もっと一般的に育成牛や肥育牛で見られるアシドーシスは亜急性アシドーシスです。亜急性アシドーシスといわれる病態では第1胃のphは5.6~5.8の状態が1日3時間以上あり、それ以外の時間はph5.8以上に回復するという変化が起きています。

 ルーメンパラケラトーシスを知ってますか?

第1胃不全角化症ともいいます。

まず角化とはから見てみます。ヒトの肌でいうと皮膚表面は角質層であり、その下に順に顆粒層、有棘層、基底層があります。肌細胞は基底層で基底細胞として生まれ、有棘細胞、顆粒細胞、角質細胞へと順に押し上げられていきます。最表面で角質細胞になる事を角化(角質化)といいます。

角質細胞は表面で肌を守る働きをします。角化不全はそれが正常に行われない状態です。

またヒトで説明しますがヒトの肌細胞は28日で新しい細胞に入れ替わります。ターンオーバーというらしいです。

メイクや間違った洗顔などで角質細胞が乾燥や刺激を受けると28日より早く剥がれ落ちてしまします。すると未成熟な細胞が角質層に押し上げられます。ただ未成熟な細胞ですので肌を守る機能も弱いのです。

これと同じ事が第1胃の粘膜で起こります。原因は酸です。つまりアシドーシスです。

第1胃粘膜細胞が剥がれ未成熟な細胞が表層に出てきますが、また酸により剥がれ落ちる。それを繰り返す事で第1胃粘膜が剥げ落ちて吸収能力が低下する、あるいは角化出来ない絨毛同士がくっついて塊になってしまいバリア機能も失う事になります。

次に引用する文献では第1胃静脈から肝臓へと流れ込むエンドトキシンの動態とは別に、ルーメンパラケラトーシスがエンドトキシン動態に与える影響を調べています。

なお、引用文中のLipopolysacchride(LPS)はエンドトキシンと同じ意味です。「牛のエンドトキシン血症における第一胃運動、第四胃運動および肝臓への影響(産業動物臨床医誌10(1):1-16,2019の試験では

全頭(5頭)について粗飼料主体の給餌(1日あたり乾草6kg、市販の配合飼料3kg)を4週間行い馴致した後、濃厚飼料受胎の給餌(1日あたり乾草1kg、配合飼料3kg、圧ペンn大麦5kg)に切り替えて4週間の制限給餌を行った。濃厚飼料主体の給餌に切り替え後、定時ごとの採材と臨床症状の観察を行い4週間後に病理解剖検査を実施した。

結果は

第1胃パラケラトーシスおよび肝臓の巣状壊死が認められた牛(№.3~5:3頭)と全臓器に病変がない牛(№.1~2:2頭)の2群に大別された。

また臨床症状は

臨床症状については、試験の全期間を通して全頭(5頭)において特段の臨床症状はみとめられず、採食量にも変化は認められなかった。

第1胃液のphは

第一胃パラケラトーシス群と病変なし群の間で第一胃液phの変動に違いは認められなかった。また両群ともに軽度の第一胃アシドーシスを生じた。

第1胃エンドトキシン量の結果は

第一胃液のLPS濃度は、両群ともに飼料変換1日後から増加が始まり7~14日後にかけてLPS濃度の増加ピークを迎える、ほぼ同じ変動を示した。

血液中のエンドトキシン濃度の結果は

血清LPS濃度は、第一胃パラケラトーシス群についてはPreではLPSは検出されないが飼料変換1日後には2.53±3.6 pg/mlと検出され、7日後にピーク値(10.2±2.9 pg/ml)を示し、28日後には5.3±3.9 pg/mlになった。血清LPSは第一胃パラケラトーシス群の全頭(3頭)で検出された。一方、病変なし群では、試験の全期間を通じて全頭(2頭)で血清中にLPSは検出されなかった。

とある。つまり

  • 濃厚飼料主体の給餌をしたところ3頭はルーメンパラケラトーシスと肝臓の巣状壊死が認められ2頭は全臓器に異常が無かった。
  • 5頭全頭で臨床症状は認められなかった。
  • 第1胃液のphは両群で変化は無かった。
  • 第1胃エンドトキシン濃度は両群で同じ変動を示した。
  • 第1胃パラケラトーシス群は血液中にエンドトキシンを検出したが、病変なし群は血液中にエンドトキシンを検出しなかった。

 ルーメンパラケラトーシスを防ぐ事がエンドトキシン血症を防ぐ事になる

エンドトキシン血症になったらどのような弊害があるのか?についてはまたの機会にする事にしますが、100%でないにしてもルーメンパラケラトーシスを防ぐ事がエンドトキシン血症を防ぐ事になるって事です。100%ではないというのは前回のブログの「肝臓に流入するエンドトキシン濃度が40 pg/mlを超えると、肝臓の解毒の処理限界を超え、血液中にエンドトキシンが溢れる」という研究結果があるからです。また、感染したグラム陰性菌が死滅した場合のエンドトキシン血症についてはルーメンパラケラトーシスとは関係ないため防ぐ事は出来ません。

いずれにしろ亜急性アシドーシスを防ぐ事がエンドトキシン血症の発生をある程度防ぐ事になるという事になります。

 

 

エンドトキシン再考

 再び牛とエンドトキシンについて考えてみる

  肉牛とエンドトキシン

最近エンドトキシンに取り憑かれております。勉強すればするほどエンドトキシンの沼にはまっていく感覚。

搾乳牛であれば(専門ではありませんので詳しくありません)分娩にまつわる周産期疾病など様々な原因による、様々な疾病があると理解していますが、肉牛について考えるとエンドトキシンが関与する疾病が非常に多いという意味でとても重要です。

もちろん目の前で起きている子牛の下痢や肺炎など個別の病気の予防や治療に対して日々対応しているのですが、もう少し俯瞰で、肉牛における問題の多くにエンドトキシンが関与しているという視点で見てみたいと思います。

  改めてエンドトキシンとは?

エンドトキシンとはグラム陰性菌に分類される細菌(一つの細菌ではなく複数の細菌)の外膜の構成成分であるリポ多糖体の事です。つまりグラム陰性菌は毒を持っていると考えても良いという事です

ではグラム陰性菌とは何?という疑問が出てくるでしょう。全ての細菌はグラムさんという人が考案した染色法で紫色に染まる菌類=グラム陽性菌と赤く染まる菌類=グラム陰性菌に分ける事が出来ます。それぞれ菌体の外壁(外膜)の構造が違う事によります。これはたいして重要ではありません。

つまりエンドトキシンとはグラム陰性菌の外膜成分であり、グラム陰性菌が死滅すると放出される毒素であるという事です。

  グラム陰性菌は牛のどこにいるのか?

そもそも牛の体内にグラム陰性菌が居なければ「エンドトキシンによる様々な障害」は起きないわけです。彼らはどこに居るのでしょうか?

  • 第1胃の中 第1胃の中には牛が食べた粗飼料や配合飼料を分解するために多くの細菌がおり、その中にはグラム陰性菌もいます。
  • 感染した細菌 元々は牛の体の中に居なかったグラム陰性菌に感染した場合です。例えばサルモネラ菌、大腸菌、パスツレラ菌やマンヘイミア等の菌です。(注意:大腸菌やパスツレラ菌は既に体に居る常在菌であり、牛の抵抗力が弱った時に発症する日和見(ひよりみ)菌であるという考え方も出来ますが、出生子牛の体の中にはおらずその後感染したと考えれば感染した細菌であると言える)

  グラム陰性菌はなぜ死ぬのか?

   第1胃の中のグラム陰性菌の場合

細菌にも人でいう寿命はあります。なので常に死んだグラム陰性菌は牛の第1胃に居ると言っても過言ではありません。その場合にもエンドトキシンは放出されます。しかしながらその程度の量のエンドトキシンは肝臓で分解、解毒されるので牛に悪影響を及ぼす事はありません。

結論から言えば牛の第1胃の中のphが酸性に傾きすぎると大量のグラム陰性菌が死滅するという事です。

   感染した細菌の場合

感染した細菌が増殖して牛に何らかの症状が出てくれば当然治療することになります。その細菌に効果がある抗生物質を使うことでそのグラム陰性菌は死滅する事になります。

  放出されたエンドトキシンの行方

「牛のエンドトキシン血症における第一胃運動、第四胃運動および肝臓への影響」(産業動物臨床医誌10(1):1-16,2019)で、敢えて濃厚飼料を多給してルーメン内のエンドトキシン濃度、第1胃静脈血内のエンドトキシン濃度、頸静脈血内のエンドトキシン濃度の変化を比較する実験がなされている。なお、引用文中のLipopolysaccharade(LPS)はエンドトキシンと同じ意味です。

試験方法は

供試牛を粗飼料多給群(3頭)と濃厚飼料多給群(5頭)に分けた。粗飼料多給群には試験期間を通じて1日あたり乾草9kg、市販の配合飼料3kgを給餌した。濃厚飼料多給群には、粗飼料多給群と同様の飼料から濃厚飼料多給(1日あたり乾草0.5kg、市販の配合飼料5kg、圧ペン大麦7kg)に切り替え4週間の給餌試験を行い、定時ごとの採材と各種測定・分析および臨床症状の観察を実施した。

LPS(エンドトシキン)の第1胃内動態の結果は

濃厚飼料多給前(Pre)の第1胃液LPS濃度は514±287 ng/mlであったが、飼料変換1日後には約4倍の2,015±1,295 ng/mlと有意に増加した。7日後から2回目のLPS濃度の著増が始まり14日後には約23倍の12,006±8,258 ng/mlに達し、28日後には3,390±4,375 ng/mlになった。

LPS(エンドトキシン)の頸静脈血液中の動態の結果は

濃厚飼料多給群のPre~1日後までは全頭の頸静脈血液にLPSは検出されなかったが、2日後に3.8±5.2 pg/mlとLPSが検出されて徐々にLPS濃度は増加し、5日後には12.7±8.6 pg/ml、21日後には20±20 pg/mlに達した

LPS(エンドトキシン)の第1胃静脈血液の動態の結果は

濃厚飼料多給群のPre~1日後までは16.9~48.7 pg/mlで推移していたが、2日後以降から増加し始め5日後には209±90 pg/mlに達し、一旦低下したのち21日後に再度増加(152±8 pg/ml)した。

とある。つまり粗飼料多給牛群でも第1胃内にエンドトキシンが存在し、第1胃静脈血にも存在するが末梢血液(全身に巡回している血液中)にはエンドトキシンは存在しなかった。

その後濃厚飼料多給すると第1胃内エンドトキシンが急増し、第1胃静脈血のエンドトキシンが増え、末梢血液にエンドトキシンが検出された。

第一胃液LPS濃度の増加に伴い、第一胃静脈血液LPS濃度が増加し、続いて末梢血液中にLPSが検出された。

また興味深い記述が続く

第一胃静脈血液中のLPS濃度が約40 pg/ml以下の場合は、末梢血液中にはLPSが検出されないことから、牛では第一胃静脈ー門脈を介して肝臓に流入するLPS濃度が40 pg/mlを超えると肝臓での解毒の処理限界を超えて、末梢血液中にLPSが検出されLPS血症を発症することが推察される。

また肝臓の役割、腸管からのエンドトキシン吸収について

肝臓は、血液中のLPSを除去する重要な臓器で、静脈内投与されたLPSの80%以上は肝臓のクッパー細胞により貪食・解毒される。健康なヒトでも腸内細菌が存在する腸管内にはLPSが産生されており、微量のLPSが腸管から吸収され門脈に入るが、肝臓のクッパー細胞で処理されるため大循環にはほとんど入らないことが知られている。

以上まとめると

  • 粗飼料多給牛の第1胃、第1胃静脈血内にはエンドトキシンが存在するが、末梢血液中には存在しない。
  • 濃厚飼料多給により第1胃内、第1胃静脈血内のエンドトキシンは著増し、末梢血液中にエンドトキシンが検出される。
  • 肝臓に流入するエンドトキシン濃度が40 pg/ml(pgはピコグラム:ナノグラムの1000分の1、マイクログラムの100万分の1)を超えると肝臓での解毒限界を超え末梢血液中にエンドトキシンがあふれ出てエンドトキシン血症を発祥する。
  • 腸管からもエンドトキシンを吸収する。

牛においてエンドトキシンがどこから来て、どのように吸収されるかを見てきました。次回は上記以外の吸収について考えてみたいと思います。

 

 

畜産現場で気をつけるべき 人の病気③ サルモネラ、パスツレラなど

 サルモネラも人畜共通感染症です

  サルモネラ菌とは

我々牛に携わる人にとってサルモネラ菌はサルモネラ・ダブリン、サルモネラ・ティフィミリウム、サルモネラ・エンテリティディス、サルモネラ・コレラエスイスの4種がとても重要ですが、そもそもサルモネラ菌ってどれくらいの種類があるのだろうか?と調べてみるとなんと2,500種類もあるそうです。

そしてその中でサルモネラ症の原因菌は1,400種もある様です。日本国内で全国レベルで発生した食品に由来したサルモネラ症として1980年代後半から急激に増加した鶏由来のサルモネラ・エンティリティディスによる食中毒の事例があるようです。

鶏のサルモネラについては生卵でサルモネラ症の危険がある程度の認識しかありませんでした。まさか牛で問題となるサルモネラ・エンティリティディスと同じ血清型であるとは不勉強にもほどがありますね

一般的にはサルモネラ症は動物に由来(卵、肉など)しますが、畜産現場では直接経口的に、あるいは手についたサルモネラ菌をよく洗わないで食事するなどにより感染します。

症状は下痢、嘔吐、腹痛、悪寒、発熱、頭痛などです。特に腹痛については立っていられない程度と表現されます。

ある時子牛のサルモネラ症が発生していた牧場の子牛担当者が腹痛と酷い下痢で休んでいました。「あれっ?今日休み?」と聞いたらそんな事で「牛のサルモネラに感染した可能性があるからすぐ電話して、お医者さんに牧場で働いている事と、今担当牛舎でサルモネラが発生している事を言う様に伝えて!」と小パニックになった事がありました。幸い陰性でしたが….

  大腸菌症

大腸菌は人や動物の腸内に普通に存在しています。大腸菌はいわゆる「ばい菌」であるとは知っているけど破傷風やクリプトスポリジウム、サルモネラと同じ人畜共通感染症として大事なの?という疑問はあるでしょう。

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腸管出血性大腸菌というものがあります。wikipediaから引用します

腸管出血性大腸菌とはベロ毒素、または志賀毒素と呼ばれている毒素を産生することで病原性をもった大腸菌である「病原性大腸菌」の一種である。このためベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌とも呼ばれる。この菌の代表的な血清型別には、O157が存在する。

O157を知らない方は居ないでしょう。1990年埼玉県浦和市の幼稚園で井戸水が原因の食中毒が発生しました(園児2人が死亡)、また1996年大阪府堺市で小学校の学校給食で出された食品がO157に汚染されており9000人を超える集団感染が発生(小学生4人が死亡)しました。

ユッケや生レバーが食べられなくなった原因ですね。

一般的には汚染された食品を食べる事で感染しますが、サルモネラ同様畜産現場では直接傾向的に摂取してしまうリスクがあります。

人が大腸菌症を発症するのに必要な菌数はわずか50個程度です。非常に酸に強く胃酸で失活すること無く腸まで到達します。

    人での大腸菌症の症状

恐ろしい病気であるのは確かですが場合によっては無症状や軽い下痢で済む事もあります。但し酷い場合激しい腹痛、頻回の水様便、激しい下血が見られる事があり、亡くなる場合もあります。

感染者の約半数は3~8日の潜伏期間の後、激しい腹痛と頻回の下痢の症状が出ます。その翌日には血便が見られますが当初は血の量はわずかです。その後次第に出血量が増え、典型的な症状で血液がそのまま出ている様な状況になる。サルモネラに比べると嘔吐は少ない様です。

畜産現場では下痢という病気があまりにも当たり前で我々も慣れてしまっていますが、とにかく畜産現場で働く全ての人は下痢に対して非常に注意が必要です。

  牛皮膚糸状菌症

牛に携わる人で見た事無い人はまず居ないであろう病気。ここ十勝地方では「ガンベ」とか「トクフク」と呼ばれています。

原因はTorichophyton verrucosum(トリコフィトン ベルコーサム)という真菌(カビ)です。子牛から育成牛で見られ主に頭から首、目の周りなどに出来ます。皮膚が円形に禿げ痒みを伴います。

抵抗力の弱い牛で出ると言われていますが、1度感染して治れば2度は罹りません。

牛における皮膚糸状菌症の詳細については別の機会にするとして今回は人畜共通感染症としての皮膚糸状菌症について書いていきます。

人の水虫やタムシと同じ原因で、人に感染してパッと見るとタムシそのものです。非常に痒いです。人によってはタムシの様な病巣でなくかなり腫れ上がる人もいます。

牛の現場で働く人でやたら痒いという人は直ぐに皮膚科に行きましょう。放っておいて治るものではありません

この写真はなんと恥ずかしながら私です。この地域の皮膚科では珍しく無いのか「猫か牛飼ってますか?」と直ぐ聞かれました。お?猫が最初に来るか~と思った記憶があります。

検査がとても痛い。患部をヘラの様なものでガリガリ血が出るくらい削って顕微鏡で見る様です。「当たりでしたね」との事

抗真菌薬の飲み薬と塗り薬を処方され、最終的に治るまで1ヶ月かかりました。私は直径3~5cmくらいでしたが、もっとずっと大きくなる人も居るようです。

  パスツレラ症

牛に携わる人なら一度は聞いた事があるパスツレラ症。実は人畜共通感染症なんです。

私が学生だった頃パスツレラ症が人畜共通感染症だと習った記憶が無いような?と思ってちょっと調べてみると気になる記述を見つけました。

人のパスツレラ症は症例が多くない病ですが、近年は増加傾向にあるそうです。色々な要因があるのですが実は検査技術が向上したことで、今までペット等から感染する「原因不明の病気」がパスツレラ症だ、と判った事も一つの要因であるそうです。

そう言えば人畜共通感染症に「猫ひっかき病」というものがあった様な気がする。

   一般的なパスツレラ症の感染源

猫のほぼ100%近く、犬の75%近くが保菌しているとの事。しかし犬、猫がパスツレラ症を発症することはほとんど無い。犬や猫に噛まれたり引っ掻かれる事で感染します。発症すると数時間で患部が赤く腫れ上がり痛みや発熱があります。リンパ節が腫れたり蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こしたりします。

この蜂窩織炎、牛でもよくありフレグモーネと呼ばれる事もあります。非常に治りにくい厄介な病気です。皮膚とその下の皮膚脂肪の間に細菌感染して皮下で広がっていく炎症です。

この場合の蜂窩織炎はパスツレラ・マルトシーダという菌による感染です。

以前はパスツレラ症は蜂窩織炎や皮膚化膿症として認識されていた様ですが、近年は呼吸器疾患、骨髄炎、髄膜炎、敗血症など重篤な症状に進行する可能性があると言われる様になりました。

私の不勉強のせいではあるのですが、私たち世代ではパスツレラ症が人畜共通感染症である事を知らない人も多いのではないかと思います。

   牛におけるパスツレラ症

色々調べてみると牛におけるパスツレラ症は敗血症を引き起こすという紹介が多いようです。我々とは少し認識が違うような….

牛ではごくごく当たり前の「肺炎の原因菌」です。もちろん他の細菌やウィルスと混合感染すれば重篤な症状になる事もありますが、パスツレラより厄介な細菌もあるので一級の警戒をするというほどの細菌ではないのです。