北海道では珍しくない凍傷
冬場の最低気温がマイナス20℃を超える事もあるこの地域では凍傷になる子牛を見る事も珍しくありません。
耳の先が落ちてしまったり、球節から下がボロっと落ちてしまいます。
球節が落ちる場合、その何日も前に球節付近にグルッと1周線が入っている様に見えます。
実際は線では無くて幅1~2mmくらい皮膚が裂けているのです。
この時点で球節から下の皮膚とその下層組織には血流は無いものと思います。だから皮膚組織が壊
死して裂けて線が入っている様に見えるのだと理解しています。
線が入ってから何日か後、1週間か2週間か、もう少し長かったかも知れませんが足が取れ始めます。出血は全くありません。
線が入っていた所より下は血液が流れていない訳ですから出血はしませんよね。当然です。2枚目の写真は右後肢球節から下がほとんど取れてしまっています。
完全に取れると3枚目の様な断面が見られます。骨も同じ断面で落ちてしまっています。
この時点では化膿もしていませんし、子牛は元気にミルクも飲みます。創面が床に着くのが痛そうでクッション材で被服して、包帯で巻いたりしましたが、最終的には化膿して駄目でした。
原因は?
初めて北海道で凍傷の牛を見た時「分娩した時の環境、例えば生まれて冷たいコンクリートの上に長時間居たとかが原因」と人が教えてくれました。
1,3枚目の写真は黒毛和牛で母牛が1,000頭を越える大規模農場の子牛でした。どの子牛も同じ様な環境で生まれていて、この子牛が特別冷える環境ではありませんでした。
他の原因が無いか調べていると松本大策先生のコラムに面白い記述がありました。
「寒冷凝集素症」という病気です。寒冷凝集素とは血液中に存在する「低温状態で赤血球を凝集させてしまう成分」で固まった赤血球が血栓となり、その先の組織が壊死するとの事。
寒冷凝集素は肺炎やマイコプラズマ感染症で増えるとの事。
それでも疑問が残る…..
冬期に肺炎やマイコプラズマ感染症に罹る子牛はこの地域ではものすごい頭数です。そしてその課程で低体温になる子牛も多いです。
また、私が見た凍傷の子牛はいずれも肺炎等の治療中、もしくは治療後の子牛ではありませんでした。
低体温と肺炎あるいはマイコプラズマが原因ならば北海道の子牛でもっと多くの牛の四肢端や耳が壊死しているはずだと思うのです。
現実的には発生件数は非常に少ない、と言っても過言ではないくらいの発生率です。
やはり凍傷だと考えるのが理屈に合う様な気も…….正解は不明です。