初産の羊 かなりの過肥(太りすぎ)の上、雄が能力が優秀でこの羊の前に分娩したお母さんは
三つ子で2頭は死産でした。
起立は出来たのですが、お腹が重いのか座っている時間が多く、おっぱいもかなり張っていて
牧場主は直ぐにでも帝王切開をして欲しい感じでした。

帝王切開にはトラウマが….
以前牛の帝王切開で大きな失敗をしたことがありました。
子宮を切開して子牛の足を引っ張って出そうとしたのですが、双子な事に気が付かずに、別々の牛の
足を引っ張っていました。一人で手術していたので何で?出てこない!パニックになって双子の可能性
に思いが至らず、かなり時間を要してしまい子も母牛も助からない事があったのです。
前の羊が三つ子だったし、このお腹の大きさからして少なくても双子。三つ子の可能性も充分あるな~
かつてのトラウマと、初産だからまず自分では埋めないから切らなくては!との思い出なかなか決断
出来ずにいましたが、牧場主の顔を見てやるしかない!と準備をしました。
術式は
ブランクがあるのと、一人でやるしかなかったので、左側横臥位でキシラジン塩酸塩(セラクタール)
で全身麻酔しました。実はNOSAI時代にも帝王切開はやった事がありません。所属していた診療所で
一度も帝王切開の手術が無かったのです。信じられないですよね。
一応いつか帝王切開する事になるかも?と頭でのシミュレーションはしていました。
その中で牛では立位(立たせて)、局部麻酔か尾椎硬膜外麻酔でするのが本来であり、全身麻酔では
お腹の中の子牛まで麻酔が効いてしまい、いわゆる「スリーピングベイビー」となり、悪影響がある
と読んだ事がありました。がスリーピングベイビーの実際の悪影響については調べても判らず、また
局所麻酔では母牛が暴れすぎて危ない状況で全身麻酔したという記事も2,3見ていました。
母羊はほぼ立てない状況なので立位はそもそも無理でした。
やはり….三つ子!!
牛と比較して筋肉の厚みが極端に薄く、子宮に到達するのは容易でした。逆に薄すぎて間違ったら
すぐに腹膜を切ってしまう程です。以前別の牧場でメス羊の卵巣だけ取り出すという手術をした事が
あったので、筋層の薄さには最初から気を付けていました。
子羊の足と頭を確保して羊膜を破り1頭目を取りだし(上顎が無い奇形でした)、もう1頭は居るはず
と手を入れるとやはり。2頭目を取りだし畜主に渡して、念のため子宮内を確認…….居ました。
3頭目も取り出し、子宮を縫合。連続縫合で一度切開部を閉じ、その縫合線が内側に入るように
2層目も連続縫合で縫いました(なんとかという縫合法ですが名前を忘れました)。
その後


子羊2頭は出生後も眠っていましたが、アチパメゾール塩酸塩(商品名アンチセダン)を0.3ml
静脈注射したら、1秒程度で目が覚めました。
写真は術後6日目の母羊と子羊(真ん中の白いのはその前に自然分娩で生まれた羊)です。
共に元気そうでとても安心しました。