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子牛のサルモネラ症が増えています②

前回に続き子牛のサルモネラ症について書いていきます。

サルモネラ症が出ると牧場には大きな被害が出ます。一つは症状が激烈なサルモネラであった場合、次々に移り朝牛舎に行くと何頭か死亡しているといった状況になり将来売るべき牛が減ってしますという被害です。

もう一つは同居牛の全頭検査、陽性牛の治療、消毒の繰り返しで莫大な費用がかかるという被害です。同居牛の全頭検査や餌槽や牛房の床などの環境検査は全てが陰性になるまで延々と続きます。検査費用は確か最初の1回分しか費用はかからないはずでしたが…陽性牛の治療や消毒は続きます。止められないのです。なぜ止められないのか?

 サルモネラ陽性になったら

①糞便検査でサルモネラが陽性になると家畜保健衛生所に連絡が行きます。家畜保健衛生所でなく民間の検査センターで検査して陽性が出た場合でも家畜保健衛生所に連絡が行きます。

②家畜保健衛生所で遺伝子型を特定します。この時サルモネラ・ダブリン、サルモネラ・ティフィミリウム、サルモネラ・エンティリテディス、サルモネラ・コレラエスイスだと同定されると家畜保健衛生所から役場に連絡が行きます。また、農協を使っている場合は農協へも連絡が行きます(農協を使っていない場合は農協へ連絡が行かないのかは自信がありませんが)。

③更にNOSAIに加入している場合はNOSAIにも連絡が行きます。

④役場の人、農協の人達が消毒を手伝ってくれます。NOSAIが陽性牛の治療をしてくれます。家畜保健衛生所が検査します。全頭が陰性になるまで続くのです。たとえ牧場主がもう費用がかかりすぎるので止めたいと言っても止められないのです

 

 いつから全頭検査で陰性となるまで…になったのか?

私もかつてサルモネラが出たら全頭検査をして、全頭が陰性になるまで消毒、治療、再検査を繰り返すものだと思っていました。かつてはサルモネラが法定伝染病(詳しくは後述します)だったのか?

30年近く獣医をしておりますが不勉強なのか記憶にありません。同じように家畜保健衛生所の先生方もNOSAIの先生方も陰性になるまで続けるのは当たり前だと思っているからだとしか考えられません。最初に強制ではありませんが全頭検査しますか?という選択肢を提示すべきでは?と思います。

 

 ここで大きな疑問が生じます。

前回のブログで、ある牧場で原因のよく判らない死亡が続き何度も血液や鼻のスワブ検査、便のスワブ検査をしても原因が判らず、何ヶ月もかかってサルモネラだと判明した事があったと書きました。上記の全頭検査で陰性になったからってサルモネラが牧場から無くなったという保証は無いと言うことになります。そもそも検査で陽性とならない事があるからです。

 

 私の契約牧場では全頭検査は行いません

私の契約牧場でも糞便検査でサルモネラが陽性になる事はあります。上記①~③の流れは同じです。役場、農協に連絡が行きます。NOSAIに加入している牧場は少ないのでNOSAIには連絡が行きません。

この時管理獣医師が居ると家畜保健衛生所から連絡が来て「全頭検査はされますか?今後どのような方針でされますか?」と聞かれます。牧場主と相談し上記の様に止められない状況になり得る事も説明します。当然全頭検査をしない事になります。

この時点で農協や役場から牧場に連絡があり、消毒や検査の手伝いをしましょうか?と聞かれます。牧場主さんから「管理獣医師と対応するから結構です」と言ってもらいます。

 

 全頭検査をしなくて大丈夫なの?

サルモネラが出た後の全頭検査は強制ではありません。昨今の鳥インフルエンザの報道で見る白い防護服を着た家畜保健衛生所の人がたくさん来るというイメージの人も居るでしょう。あれは鳥インフルエンザが法定伝染病だからです。サルモネラ症は法定伝染病では無くて届出伝染病です。診断した獣医師が都道府県知事に届け出るという事が義務であり、それ以外は義務では無いのです。全頭検査をしても、あるいはしなくても牧場と管理獣医師に出来ることは決まっています。予防と治療です。

子牛のサルモネラ症が増えています

 以前は珍しかった子牛のサルモネラ症

 数年前から増えてきました

ここ3,4年 子牛のサルモネラ症がとても増えています。数年前まではサルモネラは怖いけど滅多に出るものじゃないし…..なんて感じでしたが。

今では育成牧場(濡れ子を導入して素牛まで育てる)でする着地検査(セリで購入した牛を牧場に下ろす前にサルモネラの検査をします)でも度々陽性牛が出ます。また、下痢の原因を調べるとサルモネラが出ることも珍しく無くなりました。

 症状は血便?

特にサルモネラ・ダブリンとサルモネラ・ティフィミリウムです。

症状は様々で一番に頭に浮かぶ血便はもちろん、血便ではなく特にやばい感じがしないけど治りにくい下痢のケース、肺炎症状のみの場合もありますし脳炎の様にいきなりぶっ倒れる様な牛も居ました。

反対に着地検査で陽性になった牛の多くは無症状であり、一応下痢便を調べた牛でティフィミリウム陽性の牛で血便も無く、3日程度の抗生物質投与でケロッと直る牛も居ます。

 検査すれば陽性・陰性は判るの?

問題になるのは無症状の牛と激烈な症状を出す牛です。ある牧場では着地検査をしていたのに、生後3ヶ月くらいの群で次第に死亡事故が増えてきました。明らかな下痢症状は無く鼻と腸から採剤して、血液も何度も調べましたが原因が判らずという事がありました。

血液や腸のスワブ、便では検出されにくいというのもサルモネラのたちの悪いところです。

検査が陰性でもサルモネラを保菌しているという状況は当たり前にあります。つまり導入時陽性にならず保菌していた牛が、ストレスがかかるタイミングで発症し他の牛が感染していたのです。

急激に広がるサルモネラもありますが、じわじわ広がり死亡事故がだらだら続くというパターンもあるのです。

 治療はニューキノロン系抗生物質でOK? 

激烈な症状を出すサルモネラの場合、個人的にはダブリンで多いように思いますが、ニューキノロン系抗生物質を使って治療して改善したと思っても、しばらくすると再発する事があります。

それを繰り返して次第に衰弱してしまいます。NOSAIに糞便検査を依頼してサルモネラ陽性となると、陰性になるまで治療と検査を繰り返す様な場合もあります(当方では陽性牛でも陰性になるまで検査を繰り返す事はありません)が、ニューキノロン系抗生物質だけではなかなか陰性にならないのです。

ニューキノロン系抗生物質だけではサルモネラ(特にダブリン)を完治させるのはむずかしいのです。

サルモネラといえば血便ですが、ややこしい事に必ず血便が見られるというわけではありません。コクシジウム症で必ずしも血便が見られないのと同じです。